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Diary over Finite Fields

515ひかるが書き溜めたメモとコラムと雑記

【ネタバレあり】クリーピー 偽りの隣人

映画 新作映画レビュー

今回の感想記事はいつもと趣向が違います.

クリーピー

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「クリーピー 偽りの隣人」という映画を見てきました。6月18日から公開で、このブログで旬がすぎる前の映画の感想記事を書くのは地味に初めてな気がします。そして映画の感想を書くこと自体がそれなりに久しぶりな気がします。

creepy.asmik-ace.co.jp

一応この公式サイト開くと予告編が観られるわけですが, 正直なトコロ予告編観ないで行ったほうが楽しめると思います. 観て改めて思いましたが, この映画は事前に情報がないほうが楽しめるタイプです. なので, 私も正直なトコロ読者の皆様にこの映画を勧めるのであれば何も書かないで「観てね」と言う以外に方法はない, というのが率直なトコロです.

しかし, さすがにそれでは記事にならないし勧めるのが目的ではないので, 今回はいつもの感想記事とは趣向を変えまして ガンガンネタバレしつつ *1この映画について語っていこうと思います. なので, この映画を観るつもりの方はこの記事を読まないことを推奨します.

一応ネタバレなし感想も用意しましたが...

ネタバレなし感想はこれに尽きるのでどうぞ.

観ようかどうか迷っている人向けにいうと, 私にとっては非常に面白かったです(何も伝えられない).

では, ネタバレOKなひと, 既に映画を観た人は続きへどうぞ.















まずはあらすじから.

あらすじ

刑事でありながら, 犯罪心理学にも精通している高倉(西島秀俊)は, いわゆるサイコパス*2の殺人鬼との交渉に失敗をし, 自身も怪我を負った. 療養期間もあって一年の月日の後, 刑事を辞め犯罪心理学を専門とする大学教員としての生活を送ることに. 新生活で引っ越しもし, 妻 康子(竹内結子)との幸せな生活を営んでいく……はずだったが, その生活に影が刺し始める. 隣人の西野(香川照之)と 6 年前の未解決事件である. 隣人の西野は取り付く島もない言動を繰り返し, 不気味で高倉夫婦を困らせる. さらに高倉は刑事はやめたものの, 後輩刑事の野上(東出昌大)からの頼みで未解決事件の調査をすることに. 事件に集中し高倉の意識が少し康子からそれたところに, 西野の魔の手が. ふたつのピースがハマった時, 高倉は既に事件の中心人物になっていた……

見どころ

謎の人物 "西野"

香川照之, まじですごいな. こんなに "奇妙な人間" というか "謎の人物" を演技できるの, 端的に言ってすごい以外に言葉がない.

ネタバレするって宣言しておいていまのところネタバレしていないので, 書いてしまうと西野は実はサイコパスで犯人です. まぁそれもあって非常に演じにくいと思うのだけれど, 知ってか知らずか人の心をコントロールするように動いている. これが本当に不気味. 怖い. 歩き方まで不気味.

実際康子さんはこの西野の言動から取り憑かれてしまうわけで……

心理学 "実験"

この映画の半分を占めているのは過去の事件で, その過去の事件と言うのは一家失踪事件. この一家失踪事件は最後には*3謎が完全に解かれるわけですが, その謎を解くために実は"実験めいた"*4ことをするシーンがある. そうした中で, 被験者の早紀(川口春奈)が, 高倉にこのようなことを告げる:

「人の心を実験台にして」

「先生には人の心がわからないんですか?」 *5

人間を"実験台"(敢えてこの表現をする)にするにはどうしても倫理的な問題がつきまとう. 思い出したくもないことを思い出させたり, やりたくないことをやらせたりする. 彼女の場合は, 家族がどこかで生きていることを願っていたからこそ実験に協力をした部分が大きく(その願いは実は叶わないのだが), 高倉の必死さがどこに起因するのかわからなかったのだろう.

「法的に問いにくい」犯罪

私がこの映画で一番最初に思い出したのは, 実は(覚えている人がどれほど多いのかわからないのだが)角田美代子容疑者による一連の事件である*6.

調べてみたら, NAVER まとめまであるようなのでもし興味があれば. あるいは書籍もある.

matome.naver.jp

家族喰い――尼崎連続変死事件の真相

家族喰い――尼崎連続変死事件の真相

モンスター 尼崎連続殺人事件の真実 (講談社+α文庫)

モンスター 尼崎連続殺人事件の真実 (講談社+α文庫)

ちなみに私自身はどちらも読んだことがない*7.

私が言いたいのは, この映画の事件も同じで自分の手は汚さずに殺し合いをさせるタイプの犯人だということ(まぁ西野なのだが). 心理操作をしたという証拠もなく, とにかく立証どころか立案から難しい. 正義とは何かがわからなくなってくるタイプの話だ. 巻き込まれている側からすれば, 明らかにそれは支配であり恫喝であるわけだが, 法では裁けない. ではどう裁くのか, それはこの映画の最後の答えのひとつなので, いくらネタバレありといえども書かないことにする.

この話のなかでは恐怖で支配するのには限界があるという結論だったが, 現実はそうでもないのではないかと少し思わなくない.

怖さ

難しい話が続いてしまったので, 映画の話を少ししよう.

音が怖い. 微妙にノイズが入ったり, 大学とかで何気ない話をしていても, 捜査をしていても微妙に演出される怖さがある.

また, ホラー, あるいはドキドキさせるようなシーンも(特に後半にたっぷり)用意されているので, ホラー好きな人も楽しいのではないかと思う*8.

解放

人は恐怖から開放された暁には何をするのか. ラストシーンは非常に良かった. 恐怖からの解放と同時に放たれた感情がすべて咆哮となって出てきたのはある種当然だと思う.

幸せで平穏な生活に戻って欲しい, そう思った. フィクションだけど.

総合

私が目をつけるだけあって完成度の高い映画でした. このクオリティの邦画は僕は久しぶりにみた気がする. 特にキャストの演技が見ていて気分が良い. 重いテーマを扱っているし海外で評価されるのも頷ける.

似ている題材を扱ったものとしては, 僕に思いつくのは 「悪の教典*9, あるいは「羊たちの沈黙」, 「ハンニバル」 があるかな.

しかし, 脱線するけど邦画の未来が暗いのは悲しいことで, まずこのクオリティが映画が出せることに驚いたんだけど, おまけに邦画の敵は日本人で, 平気で下記のことを言う人がいるのだよな:

僕は上に書いたこと以上のことを当然考えた*10わけだけど, 本当に2時間この作品を観て「内容がない」と判断したんだとしたら少し悲しすぎる. もしここに書いてある程度のことを考えて内容がないというなら, それは映画の辛口批評家ってことなんだろうけど......サイコパスという表面的なテーマにとどまらず, 他者の支配(精神のコントロール)や実験倫理やら法の問題, かなり深いテーマにいくつも足をつっこんだ意欲的な作品だと思う. それを観る目がないのは, 少しあなたの人生貧しすぎやしませんか. おせっかいだがそんなことをついつい考えてしまう.

宣伝

上に挙げた映画の感想記事です.

hikaru515.hatenablog.com

hikaru515.hatenablog.com

おわり

疲れた. 久々に長々と書いてしまった. 久々に書いたからとりとめがない部分がたくさんあると思うけれど戒めだと思って公開します.

もっとちゃんと書きたいという気持ちもあるけれど, そのためにはもう一回観る必要があるわけだが, 正直本当に「もう二度と観たくない」(心臓に悪い)ので, これ以上感想の精度が上がることはないと思います. 別の映画の感想を書くときにまたイイ感じの感想を書きたい.

*1:普段の私の映画の感想録はネタバレをなるべく排して. 最低限の情報だけ持って映画に臨めるように書いている(つもり)なのですが, 今回はそうはしません. 見るつもりの方はこの記事を読まないことを推奨します.

*2:この言葉, 広まりすぎてかえって多くの人に誤解されている言葉のひとつだと思う. 正直あまり使いたくない言葉のひとつだが, 他に表現もないので致し方ない.

*3:観客には一応

*4:これはもちろん本当に実験をしているわけではなくて, 記憶を取り戻す, 証言をさせるといったことなんだけど, いわゆる学者のステレオタイプなのかかなり強く証言を求めるシーンが幾度かあり, 結構つらい.

*5:実はこのセリフを高倉に伝えたときには, 高倉にも守るべき家族が居てその危機を排するために, むしろ人間として感情的になっていたのだが, それはあとに述べる事情で伝えられないのである.

*6:正直私自身もテレビのニュースでどれほど真面目に見ていたのか覚えていないが, この映画で起きた事件とこの現実に起きた事件は割と似ているように思う.

*7:この事件が発覚したのは2012年ごろらしい. 単行本の小説『クリーピー』が出版されたのは2012年の初頭なので, この事件をモデルにしてこの小説が書かれたわけではなさそうである.

*8:私はホラーが苦手だ.

*9:僕はこの映画面白いと思うけど嫌い. サイコパスに対する偏見を助長するような気がしてならない. とてもじゃないけど手放しで楽しむ作品だと思うにはテーマが繊細過ぎると思う.

*10:書くのが面倒なこととかたくさんあるので……