読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Diary over Finite Fields

515ひかるが書き溜めたメモとコラムと雑記

愛し合うふたりに告げられるとても下品な提案: 映画 幸福の条件を観て

映画 旧作映画レビュー

この文章を読んだ時, きみはどう思うんでしょうか. きみが期待した以上のことをぼくは書けていますか. そもそも, 最初からそこまでの期待はしていないんでしょうか. 書く前から不安です.

とはいっても, ぼくは結局自分でも「ひどいな」と思いながら最後まで文章を書きつけるでしょう. ここには, きみが望むのと望まないのとに関わらず, ぼくの正直な思いを綴りたいからです. でもぼくはきみに, 何か感ずるところがあってほしいとも思っているのです. 人間とはかくも面倒な生き物であったか, という思いがします.

ここに書いたことはぼくのエゴですが, こんな映画だし自分のエゴを前文に押し付けるのもたまには許して欲しいなとも思っています.

幸福の条件(原題: Indecent Proposal)

Have you talked I love you?

Not.

I do.

Still?

Always.

久しぶりにやってきた, 古い映画シリーズ. 古いといえども古典と言うには早すぎる 1993 年の映画*1です. 世間の評価は相変わらず知らないで書こうかと思ったんだけど, どうも酷評されたみたいですね*2.

原題を直訳すると, 「下品なプロポーズ」でしょうか. 確かにジョンのプロポーズはものすごく下品だし, テーマが下世話だしどうしようもなく安っぽい映画です. ですが, 難しいことを言う前に先に結論を言いましょう. ぼくは好きです. ぼくはこういうの大好きです. 重要なことなので重ねて言いました.

あらすじ

心から愛する人は一度 手放せ

戻ってきたら永遠に自分のもの

戻らなければ縁がなかったのだ.

19 歳の若さで駆け落ちで結婚したデイヴィッド(ウディ・ハレルソン)とダイアナ(デミ・ムーア). デイヴィッドは建築家になり, 夢のマイホーム建設のために多額のローンを背負う.しかし不況の煽りを受けデイヴィッドはリストラに遭い, 父親に借金をして仕事をしていこうとする. しかし, デイヴィッドの思いつきでラスベガスのカジノで一攫千金を狙う. 当然現実はそんなにうまく行かず夫婦は全財産を失ってしまう.

そんな中, 億万長者ジョン・ゲージ(ロバート・レッドフォード)に目をつけられたダイアナは, 彼の 100 万ドルを賭けカジノで勝つ. お礼にジョンのパーティに招待された二人だったが, そこでとんでもない提案をされる:「奥さんとの一夜を 100 万ドルで売ってくれないか」

感想

愛し合う二人はすべてを覚えているものだ.

忘れるのでなく許し合うことが大切なんだ.

物語の進展には触れながら書く. 何も知らないで映画を見たい人はこのへんで閉じたほうが無難だと思う.

チープなストーリー

安っぽいのは否定しない. あらすじを書いていて改めて思ったけど本当に安っぽい話である(中盤はここまで安っぽくないと思うが……). ある意味王道とも言えるわけだが.

ところどころに現れる "ゴージャス感"

ふたりは貧乏なくらしをしているので, そんなにお金に縁があるわけでもない. しかし, ジョンの登場により映画の舞台が豪華になる. クルーザーが出てきたり, ヘリコプターに乗ったり, オークションに参加したりと. チープなストーリーと下品なテーマ*3なのだが, こうした舞台の高級さが少し機能して低俗な映画ではなくなっている. それにジョンとダイアナの百万ドルの一夜に何があったのかも全く描かれていないのも, この映画が(下品かもしれないが)見られない映画ではない所以だと思う.

ひょっとしたら, このテーマの時点で拒否反応を起こすとこの映画は見られたものじゃなくなるかもしれない. しかし僕が考えるに(後述する)この映画のテーマは金で女を買えるか否かには決して集中していないと思う.

こういう細かい所, ぼくは本当に好き.

冒頭で夫婦喧嘩するシーンがあり, 靴をテーブルの上に置いたデイヴィッドに対してダイアナが激昂し, ナイフを投げつけるシーンがある*4. 物語の中盤から後半にかけて, デイヴィッドとダイアナは別居生活をするのだが, その際にデイヴィッドが靴をテーブルの上に置いているシーンがある. それを自分で気づいて, 彼女を憎んでいるはずなのに少しさみしそうな表情をしながら靴を床に置くシーンがある. これが本当に好き.

幸福のために

以下はわりと核心に触れる.

さて, 普段邦題を良いと思うことはあまりないのだけれど, この邦題は結構いい味を出しているのではないかと思う. 少なくとも, 「下品なプロポーズ」ではこの映画は観る気にならなかっただろう.

幸福の条件とは何なのだろうか.

夫婦には足りないものがあった. 彼らは愛し合っていたが, 許し合うことを経験していなかった. 痴話喧嘩なんてレベルではない, ふたりの関係が危機的な状況に陥った時, ふたりの想いを共有し, 許しあうことができなかった. おそらく, ジョンはそれを見越していたのではないだろうか.

ジョンの一目惚れは本物だったと信じたい. ジョンの下品なプロポーズは, 彼の戦略のひとつだったのだと思う. きっと, 彼の心はチョコレートを盗み食いするダイアナをひと目みたときから決まっていたのだと思う. だからダイアナはジョンと結婚すると, お金もある, 愛してくれる旦那も居る生活ができただろう.

しかしデイヴィッドも, 彼女とは会わないことにより成長をしていた. お金はないけれど, 彼女を, 愛する人を許すことを覚えた. 許した上で覚悟を決めて, 彼は離婚届にサインをするのだ.

ダイアナにとっての幸福の条件が満たされた時, 彼女はその男のもとへ向かう.

総評

ぼくの好みの映画です. なぜ評価が低いのかよくわからないのですが, 合わないとしたらばぼくと感性がずれているか, 先に書いたように映画のテーマに拒否反応を起こしてしまっているかのいずれかではないかと思います.

気になったらみてみてください.

P.S. この映画を勧めてくれてありがとう.

幸福の条件 [Blu-ray]

幸福の条件 [Blu-ray]

*1:ぼくが生まれた年でもある.

*2:かなり目につくほどにはめちゃくちゃ言われているようで.

*3:金で女を買えますか, がひとつのテーマなのだからそれは下品だろう.

*4:ちなみにそのあとすぐ仲直りのセックスをする.