Diary over Finite Fields

515ひかるの日記と雑文

価値のある情報

雑多な情報が跋扈している昨今だからこそ, お金を払ってきちんと情報を手に入れないといけない, などと考えている. 正しい知識はものすごく価値があるものだ.

無料で手に入るものっていうのはやはり無料で手に入る程度のものでしかない. 安物買いの銭失いとはよく言ったもので, 安いものを買うのを我慢して高いものを買う資金にすべきだ, という理屈になるだろう*1. やはり高いものは高いだけの理由があるし, 安いものには安いだけの理由がある. そして私は知識についてもそれは当てはまると思っている.

プロが伝える伝えにくいこと

知識として知っていれば直ちに実践できることと, いくら知識だけを身につけたところで実践するには難しいものがある. 最近読んでいる 『CSS 設計の教科書』はまさしく後者の類の知識である.

Web制作者のためのCSS設計の教科書 モダンWeb開発に欠かせない「修正しやすいCSS」の設計手法

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私はこの考え方自体は(表面的には)知っていたのだけれど, ネット上の記事をいくらあさってもよくわからないままだった. 理由は, これは知識ではなくて思想だからである. 知識なら無料でもいくらでも得られるけど, 思想は体系だって学ばないとよくわからなくなるものである.

数学で言えば線形代数や微分積分でもそうじゃないだろうか. それ自体の知識ももちろん使うけれど, このふたつで現代数学の基本的な考え方を学んでいるのではないだろうか.

そして, 伝えにくいことはやはり素人では伝えられないのである. 普段僕はプロの数学者の本やプロの小説家の本, その技術を熟知したプロの本ばかり読んでいる. そしてそれはお金を払っているだけあって伝えるための工夫がたくさん盛り込まれている(やさしいとは言っていない). 多くの場合(全部とは言わないし言えない)ネット上のタダで手に入る資料はやはりタダ相応の資料で, 伝えるための工夫がほとんどなされていないのが普通ではないだろうか. 私はこのブログをてきとうに書いているが, やはりこれもタダだから(そんなに読まれてないけど)アクセスがあり, お金を取るんだったら誰も読まないだろう*2.

ネットでは勉強できない?*3

ネットからタダで知識だけ得られれば良いんじゃないかと思っていたこともある. しかしタダで手に入る知識は正確さに欠けたりすることも当然あるが, 体系だっていない側面もある. だが, おそらくそれ以上に問題なのは, ネットで調べられる範囲は自分が知っている範囲のことしか調べられないということである.

例えば「準同型定理」というフレーズを知らない人は「準同型定理でググろう」とも思わないし, 「オブジェクト指向」というキーワードを知らない人は「オブジェクト指向でググってみよう」というスタートラインにすら立てないのである. 案外見逃されがちだが, 日常生活でキーワードを知る機会も, ましてやその中身を知る機会ってそんなに多くはない.

自分の知らないことに, その中身まで伴って出会う機会を簡単に得られるのが書籍である. 数学では例えば「複素解析」というタイトルの本を読むと, 後半のほうでは「楕円関数」とか, 「微分形式」とかキーワードが出てきて, 複素解析しか知らない人でもあらたなキーワードを覚えてその中身が分かるようになる. これをネットでやろうとしてもそうはいかないだろう. Web 系だったら CSS 設計の本を読んでいると, オブジェクト指向の考え方の一部やら Sass の使い方と OOCSS の実践のようなことも書いてあるだろう. 少ないキーワードから多くのキーワード, 知識にたどり着けるのが書籍の良いところである.

ネットの強み

ただ書籍も良いところばかりではない. 検索性が低いのは電子書籍を使えばどうにかなるかもしれない*4. 逆にいうと, 断片的な情報をすぐに探せると言う点ではネットはめちゃくちゃ便利である. 例えば, 「シェルスクリプトで相対パスを絶対パスに変換したいな~」 って思ったときにひたすらにシェルスクリプトの書籍をあたってもそんなことは書いていないだろうが, ググると見つかる*5.

だから, 自分がいまどういう勉強をするべきか(しっかりと基礎的なことから身につけるべきなのか, それとも今ぶつかっている課題を解決するストレートな道筋が欲しいのか)で, 勉強する方法を変えよう. 特に必要ならば惜しまずにお金を払おうということ. 情報も知識もタダで手に入るものだと思うな, ということである.

蛇足

一応言っておくと, ご好意で公式のドキュメントなどが無料で公開されているソフトウェアなども多い. Pro Git などは典型ではないだろうか. コンピュータソフトウェア関連には多いけれど, 学問的なことには残念ながらあまりない*6. なので, 何かしらを勉強をするなら書籍を買うのが一番いいと思う.

しかし, 公式ドキュメントってなかなかむずかしくて, 自分が分かろうとしないと読めないものが多い. 情報は信頼のおけるものであるけど, ドキュメント整備にお金をもらっているわけではないからだろう(多分).

あと, どんな書籍が良いかは, どうやって調べるべきなんだろうか. ちょっと分からない. 知っている人に聞くべきなのだろうか.

*1:それ以外の解釈があれば教えて欲しい.

*2:ちなみに私もお金をもらいたくはない.

*3:ここでは検索して無料でアクセスできる範囲の情報のことを, ネットの情報と言うことにする. なので有料の電子書籍などは含まれない.

*4:が私は電子書籍を買ったことはないのでわからない.

*5:この辺は慣れも必要だが.

*6:信頼のおける情報という意味では.