Diary over Finite Fields

515ひかるの日記と雑文

素数とゼータ関数という本を買った

素数とゼータ関数 (共立講座 数学の輝き)

素数とゼータ関数 (共立講座 数学の輝き)

  • 作者:小山 信也
  • 出版社/メーカー: 共立出版
  • 発売日: 2015/10/24
  • メディア: 単行本

こんな本を購入した.

初等的な解析数論の本と思ってもらえばいいと思う. しかし初等的というのは抽象的すぎない程度の意味であって, むしろここまで正確にゼータ関数の議論を書き上げられたのは賞賛に値すると思う.*1

たとえば, 次のようなトピックが僕の目についた.

  • 算術級数定理の初等的考察
  • 無限積の正確な取り扱い
  • 素数定理の完全な証明
  • Dirichlet の素数定理の証明

など. 解析の諸概念や結果が解析数論への応用を意識して書かれているので見通しがいい. 入門書として非常に良いと思う. まだざっと眺めてしかいないけれど.

特に算術級数定理などは結構な大定理であるが, この本の特徴としては大定理に対して初等的な考察をしていることだと思う.*2本来大定理というのは初等的な考察から帰納されて得られるものである.*3そうした考察を行っている時点でこの本は教育的であると結論づけていいのではないだろうか.(しかも考察は初等整数論の範囲で実行している!)

他にも, たとえば無限積を正確に取り扱うのはそれだけでいくらかページ数を割かないといけない. そのため類書でも若干ごまかされていたりすることもある.*4無限積についてきちんと学んだことがない方は, この節だけでも読む価値はあるのではないだろうか.

これはぜひとも読んでおきたい本だと思っている. 僕も読みたいが, そしてまだ若い学部1, 2年生, あたりにぜひ読んで欲しいと思う. この著者の教育的な姿勢に触れておくのは良い経験になるだろう.

*1:一応言っておくが僕が正確に読んだわけではないのでどこまで正確かはわからない. しかしまえがきや目次を見る限りごまかしは一切なさそうである.

*2:大定理というのは, その定理を目標にすると, せめて本の1章くらいは書けるほどの定理のことである.

*3:『近世数学史談』(高木貞治著) などを参照されたい.

*4:『解析概論』にはたしか正確に書いてあった気がするが, 無限積の扱いは存外古い本でないと正確な取り扱いが書かれていなかったりする.