Diary over Finite Fields

515ひかるが書き溜めたメモとコラムと雑記

はてな記法で初めて記事を書くチャレンジ: 有限体の構成

数式を書かないからはてなブログに戻ってきたというのにはてなブログ戻ってきてすぐ数式を書くとはこはいかに, と思ったけれど, 世の中ってそういうものなので諦めることにした. はてなの Markdown 記法による数式の記述は難点が多すぎるので, 割りきってはてな記法を一度使ってみることにした. もし気に入ったら今後も数式をはてなブログで書くことが増えるだろうしそうでなかったらお察しである.
今回はめちゃくちゃライトな有限体ネタである. ライトとは言っても, 一応これでも専門が数学だから専門のことに関しては見当違いなことを言ってはいけないと思うもので, 結構真剣だ. 映画とか読書とか SF とか趣味だし間違った事書いてもいいやくらいに思っているけど, さすがにこと数学とあればそういうわけにもいかないのであまり記事が増えないっていう説はある. 無責任に書けないので.
そんなわけで堅苦しくはなるけれど, 僕がやっている分野ではよく言われるお約束みたいな注意を書いておく. 以下, 特に断りのない限り環は単位的な可換環であるとし, 環準同型写像は乗法単位元を乗法単位元にうつすことを仮定する.
また, {\mathbb{F}_q} は位数 {q} の有限体であるとする. ただし, {q=p^n} であり, {p}素数である.
なお, この記事は環論の基本中の基本を知っていれば読めるように配慮したつもりである.

長いので続きへどうぞ.

体の標数

標数という言葉を聞いたことがあるかもしれないしないかもしれない.
とりあえず整域 (零因子を持たない環) {R} で考えよう. このとき,

{\begin{align}
\varphi: \mathbb{Z} &\to R \\ n &\mapsto n\cdot 1_R
\end{align}}

なんて写像が考えられる. この写像は環準同型写像であり, この写像 {\varphi} の核 Ker {\varphi}{\mathbb{Z}}イデアルであるから, {m\mathbb{Z}=\{mx\in\mathbb{Z}\mid x\in\mathbb{Z}\}} の形をしている.(単項イデアル環!) この Ker {\varphi} の生成元を環 {R}標数という. 環 {R}標数を Char {R} と書くこともある.

命題

{R} が整域のとき, {R}標数{0} または素数である.

証明

準同型定理より, {\mathbb{Z}/\textrm{Ker} \varphi \simeq \textrm{Im} \varphi \subset R} で, {R} は整域であるから, その部分環である {\textrm{Im} \varphi} も整域.
したがって, それと同型な {\mathbb{Z}/\textrm{Ker} \varphi} も整域であるが, これが整域であるための必要十分条件は Ker {\varphi} が素イデアルであること. よって, Char {R}{0} または素数.

この記事では, 標数{p} の有限体について考察したい. まず標数 {p} の有限体の具体例を挙げよう. {\mathbb{F}_p = \mathbb{Z}/p\mathbb{Z}} とおく. ({\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}} は体である.) これは有限集合であるから有限体と呼ばれる. 任意の標数 {p} の体は {\mathbb{F}_p} と同型な体を含む. そのような体を素体とよぶ.
では, 他に有限体はどのようなものがあるのだろうか. それを考えるために体の代数拡大について少し述べることにしよう.

代数拡大と有限体

まず体の代数拡大について少し述べよう. 一般に有限個の元を添加するのを記述するのは面倒だし, ひとつ添加する場合しかこの記事では使わないので, 単拡大についてのみこの記事では言及することにする.
より詳しい話は, たとえば記事の最後に挙げる参考文献などを参照していただきたい.

ここでは標数は任意(すなわち標数 {0} の体でもよい)とする.

まず代数的な元について述べよう.

ある元(ただし {k} との演算が定義されているような元) {a}{k}代数的であるとは, ある {k} 係数多項式 {f(x)} が存在し, {f(a)=0} を満たすことをいう.

たとえば, {k} の元は {k} 上代数的である. また, {\mathbb{Q}}{\sqrt{-1}} は代数的である. ({X^2+1}有理数係数の多項式)

続いて, 単拡大の定義を述べよう.

2 つの体 {k \subset L} があるとする. ある 体 {k} 上代数的な元 体 {a} が存在し, 体 {L=k(a)} と書けるとき, 体 {L} を 体 {k} の単純拡大体という. この 体 {k} から 体 {L} への拡大を 体 {L/k} と書き, 単(純)拡大と呼ぶ.
(ただし, 体 {k(a)} は 体 {k} と元 {a} を含む最小の体である.)

命題(いささか不正確である)

{k(a)}{k} 上の基底 {\{1, a, a^2, \dots, a^{n-1}\}} をもつベクトル空間に等しい. すなわち, 以下の等式が成立する.

{
\begin{align}
 k(a) = \{c_0+c_1a+\cdots +c_na^{n-1} \mid c_i\in k\}
\end{align}
}

ここで, {n = \deg f} (最小多項式と呼ばれるものの次数)である.

略証

{k[X] \to k(a)} ({f(X) \mapsto f(a)}) なる準同型写像に, 準同型定理などを用いれば良い.
手前味噌ではあるが, 詳細は次の pdf の 11p に書いてあるので参考にされたい.

https://notworthsaving.github.io/math/pdf/2014_welcome.pdf

書くことがありすぎて心が折れてきたので次の基本事項を事実として羅列しておく.

事実1

{
\begin{align}
k[X]/(f) \text{が整域} \Leftrightarrow (f) \text{が素イデアル} \Leftrightarrow f: 0 \text{ であるかまたは } k \text{ 上既約多項式}
\end{align}
}

事実2

{
\begin{align}
k[X]/(f) \text{が体} \Leftrightarrow (f) \text{が極大イデアル} \Leftrightarrow f: k \text{ 上既約多項式}
\end{align}
}

ただし, {f}{k} 上既約多項式であるとは, {f=gh}因数分解したとき, {\deg g = 0} または {\deg h = 0} が成立することである.

だいたい体論からの準備は終わったので, 実際に有限体の構成をしよう.

有限体の構成

唐突だが, {\mathbb{F_4}} を作ったことはあるだろうか. 元が 4 つの体である.

この記事の目標は実は {\mathbb{F_4}} を作ることである. その準備はもう整っている.

順番としては, 次のようになる.

  1. {4=2^2} なので, {\mathbb{F}_2} を拡大すればよいことがわかる.
  2. {\mathbb{F}_2} 上の既約な2次方程式 {f\in\mathbb{F}_2} を考える.
  3. {\mathbb{F}_2}[X]/(f) が体である. しかも元の数は 4 である. ゆえにこれが {\mathbb{F}_4} である.

では, {f} を求めよう. といっても係数が有限個しかとれないので考えられる二次方程式も有限個(というか 3 つしかないの) で, 次の表のようになる.

多項式 既約
{X^2} ×
{X^2+1} ×
{X^2+X+1}

よって, {\mathbb{F}_2}[X]/(X^2+X+1){\mathbb{F}_4} である. これは実は単拡大になる. すなわち, {\alpha} で, {\mathbb{F}_4=\mathbb{F}_2[\alpha]} を満たすものがある.
したがって, {\mathbb{F}_4=\{0, 1, \alpha, 1+\alpha\}} であり, {\alpha^2+\alpha+1=0} を満たす.

しかし, この {\alpha} を具体的に表示することはできない, 言い換えればこの二次方程式 {\alpha^2+\alpha+1=0} は解けない.
なぜなら, 解の公式を考えると {2} で割ることが必要になるが, 今標数{2} なので {2=0} である. したっがって, この方程式は解けない.

つまり, 標数 {0}標数 {2} では全く違う数の体系であることがわかる.

感想

はてなブログで数式を書くのはすごく疲れることがよくわかった. あと書くべきことが多すぎて心が折れた.
もし間違いなどを発見されましたらぜひぜひご連絡ください. あと質問があればお気兼ねなく.

参考文献

可換体論 (数学選書 (6))

可換体論 (数学選書 (6))

代数学2 環と体とガロア理論

代数学2 環と体とガロア理論