Diary over Finite Fields

515ひかるの日記と雑文

可換体論で@515hikaruがヤバいと思ったランキングTop3 を MathJax 使って書き直した.

2015 年 9 月 25 日 追記.

これは当時(2013 年 12 月), 数学関連の Advent Calender (Mathematics Advent Calendar 2013 - Adventar) に参加表明したのはいいものの, 直前で高熱を出し準備が追い付かず, 苦し紛れに書いたブログ記事である. 前の人の記事の内容もうけず, しかもあとの人にバトンを渡すのも忘れているかなり無法者を晒してしまった記事である.

当時僕は全くプログラミングにも {\LaTeX} にも詳しくなくて, まず MathJax どころか JavaScript がどんなものかもわかっていなかったのではないかと推察される. この記事は原文ママ引用したのだが, とても(体裁的な意味で)読めたものではない*1ので, せめて体裁だけでも整えようと 30 分で該当箇所を MathJax 化しただけである. 機械的に直しただけなので, 2013 年 12 月の僕の文章がそのまま読める.

ちなみにもとの記事も消していない(Advent Calender の記事のため消さない方がいいだろうと判断している).

hikaru515.hatenablog.com


投稿日時は迷ったが, 別に読まれたいとは思っていないので元記事と同じ日付に投稿したという設定にしてある.



以下, 2013 年の僕です.

企画説明

どうも、@515hikaruです。はじめましての方ははじめまして。 知ってる人はこんにちは。

このテキストでは、いま名古屋大学の理学部数理学科、二年生が主体で行われている 「『可換体論(新版)』(永田雅宜著、裳華房)を@515hikaruが4年生になるまでに読み切 る会」(いま命名した)で、僕がヤバいと思った定理を紹介します。といっても、 まだ Galois の基本定理も証明して いないので、代数拡大の話しか出てこ ないですが。

事前知識

とりあえず"まったくself-contained を意識していない"状態で書いていますので、ご注意。事前知識としては『可換体論』第一章程度の代数の知識があれば。Notation は、ある程度きちんとやりますが、もし書いていない部分 があっても『可換体論』準拠。まあ3つしか紹介しないし、証明もしない方針 で行くので、"『可換体論』読むとこんな事が分かるのか!"くらいの感想を 持ってほしいとは思いますが、 既に Galois 理論やった人が読んでも、さして面白いことはないと思います。(あらかじめ言っておきました。読むかどうかは任せます)

定義とNotation

全体に通じるNotationをここでしておきます。とりあえず、環は単位元つき可換環で、体は可換体をさします。特に、{K,L,M} …とか書いたら体だと思ってください。 また、{K[X]}と書いたら体K係数の多項式環。原則として不定元にはXを用います。 体の元は小文字{a,b,c}…でかくことにし、写像は{\sigma}, {\tau} などギリシャ文字の小文字で 書くことにします。 また、{K[a]}と書いたら、体{K}と元{a}を含む最小の環を表し、{K(a)}と書いたら体{K}と元{a}を含 む最小の体を表します。

まだ定義としては不十分な気がしますが、その定理に必要な分だけ定義と Notation をすればいいので、とりあえずつまらない教科書調の定義の羅列はここでおしまい。ゆるふわな感じでいきなりランキング発表しましょう~~

第三位

任意の体係数の多項式に対し、その根を全て含むような体が存在する。

これはまぁ、アレですね。そのまんまです。要するに任意の体係数の多項式は (どこに根があるかを問題にしなければ)絶対に解ける、という定理。 既修者のために言っとくと、いわゆる最小分解体の存在です。

代数的な元の定義を考えると当たり前では?という気がしなくもないんですが、この定理がないといろんなことが考えられない(考えにくい)ので、載せておきました。(代数的な元の定義は下に書いてあります)

第三位タイ

任意の有限体の単元群は、巡回群である

さすがに短すぎた気がするので三位タイを急きょ加えました。まぁそんな裏事情 はどうでもいいけど。

さて、体は {0} を除けばその体の乗法について群になりますが、それは巡回群になる、 ということですね。これは、有限体の有限次代数拡大は単拡大にできることを 象徴する定理です。(ああ全然初学者に優しくないテキストだ)

第二位

{K} 上代数的な元 {a} があったとき、{a}{K} 上で既約であり最高次係数が {1} になるような 多項式 {f(X)} が一意的に定まり(最小多項式という)、かつ {K(a)}{K[X]/f(X)K[X]} と同型 で、しかも体の拡大次数 {n:=[K(a):K]=\deg f}。さらに、{K(a)}{K} 上ベクトル空間 として基底{\{1,a,a^2,…,a^{n-1}\}}をもつ

長い!!

いきなり長くなりました。まぁこの定理がやばいというよりかは、この定理があるから我々は代数拡大を議論できるといっても過言ではないくらい頻繁につかう定理なので、ここに挙げておきます。

今までのところ初学者にまったく優しくないので、この定理だけでも真面目に解説しましょう。私が元気なうちに。

代数的な元とは

細かいことはハショりますので知っている人も文句言わないでください。

{K} の上に {a} が代数的:⇔{K} 係数多項式で、{a} を根にもつものがある、ということ だから、{a} を根に持つような多項式の中で次数が最小であってさらに最高次係数を {1} に するようにとれば、実はそれは {f(X)K[X]} (単項イデアル) が {K[X]} の極大イデアルになっている。したがって、 {K[X]/f(X)K[X]} は体になり、(ごまかすけど) {K(a)} と同型になってますよ、というような定理です。

拡大次数というのは、いま、{K}{L} の部分体とすれば、{L}{K} 上のベクトル空間とみなすことができます。そのときのベクトル空間としての次元(基底の数)が拡大次数 で、{[L:K]} と書きます。

応用:複素数体を代数拡大で作る

複素数体を作りましょう。まずこの節で{\mathbb{R}} と書いたら実数体、{C} と書いたら複素数体とします。

さて、{\mathbb{R}[X]} の多項式、{X^2+1} の根は {\mathbb{R}} 上に根を持ちませんが、根 {i} を形式的に導入 しましょう。つまり {i^2=-1} 。これは{\mathbb{R}} 上代数的で、{X^2+1}{\mathbb{R}} 上既約。したがって、上の定理から、{\mathbb{R}[X]/(X^2+1)\mathbb{R}[X]} は、{1\in\mathbb{R}} と、{i} を基底とするベクトル空間になります。 つまり、みなさんがよく知ってる複素数体です。代数拡大で作ると、一瞬です。 ちなみに、これを(つまり {\mathbb{R}(i)} を)複素数の定義とする流儀もあるようです。

第一位

Artinの定理

{L} の自己同型群 {\mathrm{Aut}L} の有限部分群 {G} をとると、{G} の不変体 {K} 上で {L} は Galois 拡大に なっていて、しかも {[L:K]=\#(G)} ({G} の元の数)であり、{G} はガロア群。

なにがすごいのかというと、一般性が高すぎる。とりあえず、{\mathrm{Aut}L}の有限部分群 をとってしまえば、実はそれはガロア群になっているということです。 うむ、すごい。

Galois 拡大というのは分離的正規拡大で、Galois 群は {L/K} が Galois 拡大の時の {K} 同型がなす群です。(全く説明になっていないことは自覚している)


というところで、終わりです。まぁ自分でも面白いとか面白くないとかよくわからないです。ただの感想文ですし。

ま、Galois の基本定理を証明してからこの文章を書くべきだった感しかないですね。

可換体論ゼミ自体はまだまだ続きます。進捗としては、2013年12/8時点で第二章§7をやっております。名古屋近郊のかた、興味があればご相談ください。

ではまた。

*1:内容的な意味でも読めたものではないけれど